表作(夏作)の水稲収穫後、裏作(冬作)に麦、小麦を育てることは、日本の気候風土における、農のあり方、主食となる食糧確保に欠かせぬ重要なことです。
暑い夏の主食にやや陰性で身心を養う麦、小麦をとり入れ、寒い冬の主食には温めて大いに身心を補い養い元気をもたらしてくれる米を中心とすることが、いつの時代にも変わらぬ基本となるものです。
今年も麦、小麦の栽培を昨年から取り入れた移植の方法で行う予定でいます。
自然農39年目におけるよりよき育て方の勉強を兼ねての試みでもあります。
【種降ろし・苗床期】
苗床を整えての種降ろしは、10月15日〜20日頃。稲刈りの約一ヶ月前に行います。
草々や前作のものを刈り倒し、平鍬で表面1〜2cmを削り取って、これから生えてくる草々の種子を取り除きます。
米の苗床と同様に幅1.2m位の苗床にします。面積は米の苗床の2倍程度です。
定植する条間は50cmで米と同じです。株間は50cmのお米の半分で25cmとします。お米の株と株の間に2株植えることになりますから、お米の2倍の種子量です。お米と同様一本植えです。
定植時期は稲刈り後ですから、11月の中旬で15日〜20日頃ですから、苗床期間は約一ヶ月間です。お米の苗床期間は二ヶ月ですから、その半分の期間です。
約3cm〜3.5cm位の間隔があれば、丈夫な苗に育ちます。
種降ろしから5日後頃から発芽しますから、お米より5〜6倍の早さです。
発芽後数日して足元に草が生えてくれば、除き取って草に負けないように手助けします。1〜2度、簡単にできる作業です。
【定植】
水田は稲刈り前10日頃には排水を計り、稲刈り時には水分も去り、湿度の軽減した畑状にしておきます。
育った苗を平鍬で2〜3cmくらいの深さで掘り上げて苗箱に入れ、一株ずつはずしながらノコギリ鎌を用いて植え穴をあけ、植えていきます。麦、小麦の苗から土が落ちていても大丈夫、そのまま植え付けますと活着し、新たな根が再生して育っていきます。
植え場所10cm幅位は除草を行なった所に植えます。
【草管理】
12月中旬に自然乾燥した稲を足踏み脱穀機で脱穀して、すぐに稲藁をそのまま5〜10cm位に育っている麦、小麦の上から全面にふりまきますが、その前に麦、小麦の足下、条間全体に1回目の除草をノコギリ鎌ないし、平鍬で草の茎を残さずに削り取っておきます。数日後に草が枯れた頃に稲藁をふりまきます。
1月後半から2月初旬に2回目の除草を行って終りとします。麦、小麦が茎を現わし徒長していく営みになれば、除草作業をしては成長を害ねますので行いません。もし2月下旬から3月初旬に草の徒長が特に長ければ、地上部のみ刈ってその場に敷いておきます。麦、小麦の手入れはこれで終りです。
【収穫・脱穀・貯蔵】
収穫は完熟してからとします。裸麦は6月初旬、穂刈りの方法で行い、ゴザにて数日間よく乾燥してから木槌でたたいて脱穀します。
小麦はだいたい6月10~15日頃、完熟してから稲と同様に株元から刈り取り、足踏み脱穀機で脱穀行ない、唐箕で風選してからゴザで直射日光で数日間干してよく乾燥します。乾燥した麦、小麦は紙袋に入れて貯蔵します。
晩生種のライ麦の収穫は6月20~25日頃、刈り取りは茎が小麦の倍位に高いゆえに茎の中間位、小麦と同じ長さ位に刈り取り、小麦と同じ方法で脱穀、調整、乾燥を行います。利用も小麦と相似ています。
【品種】
栽培しています品種は、裸麦は芒の長いモチ麦。小麦はやや強力粉の南のかおりです。それと晩生種のライ麦です。
【製粉】
製粉は手動式、あるいは水車で行なえば最もよいのですが、しかたなく家庭用の電動製粉機(製粉部は石でドイツ製です)で用いる都度行なって食しています。製粉後、数日経過しますと、酸化して味が落ちますのでその都度製粉します。
日本の気候風土における主食は、お米を中心として麦、小麦があって完全です。又冬季は米、夏季は麦、小麦が季節に応じた食ともなり、食生活に麦、小麦が加わると身心の健康にもつながり、食生活が楽しく豊かとなります。
【バラ撒きから、移植の方法へ】
自然農を始めた当初は、稲刈りの20日〜1ヶ月位前に、稲穂の上から小麦の種を直接バラ蒔きをしました。反当8升の種子量です。稲の足元、草々の足元に種子が落ちて、湿りが保たれているゆえ発芽は自然にします。太陽の陽射しで乾燥するとか、小鳥に種子を食べられるということは決して起こらず、種降ろしの作業のみで収穫まで何もせずとも育ちました。稲刈りは5〜7cm育っている麦、小麦を踏みながら作業します。
数年後からカラスノエンドウが生えてくるようになって、高く育って麦、小麦が負けるようになりましたので方法を変えました。
稲刈り後、一面のバラ蒔きをして、ノコギリ鎌で丁寧に育ちはじめている緑色した冬草を目的にして地上部1cm位の深さで草を刈り、その場に敷いておく方法で行いましたら、麦、小麦と冬草が同時のスタートとなって草に負けることなく育つようになりました。
やがて水田に牧草が増えてくるようになり、麦、小麦より背が高くなり、麦、小麦の育ちが悪くなりましたので、移植の方法で成育の前半に2度くらいの除草、草刈りを行うことにしました。このことによって育ちがよくなったのと、作業時間と作業能率が最善となりました。
自然農の最大の基本は決して耕さないことですから、また草を敵にせず作物の足元には種々の草がはえており、一生全うする草もありますゆえに、はえている草の種類が変化します。その変化に応じて草の性質をみきわめて対応、対策をたてて作物が負けないようにします。
(2017/11/21 奈良県 川口由一さん投稿)
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