・苗箱による稲の育苗について

相談:自然農4年目を終えた標高550mにある田です。11月から雪となり3~4mの積雪、土が出てくるのは早くて4月中旬、通常GWの頃の豪雪地帯です。従って苗は、畑で大きく育ってもらう時間が厳しく、昨年に初めて苗箱での育苗を試しました。

 ヤシガラ等を編んだ無肥料のマットに自家採種籾を直播、無肥料の土に燻炭など混ぜて覆土。発芽は順調でしたがその後の発育が良くなく、個体差はあるものの田植時(6月上旬がリミット)にはとても小さく何とも頼りない姿が大勢で、全て育ち切りはしましたが収量は過去最低(正味7aで玄米にして100キロ位)でした。

 手の貸し方のまずさと異常高温、渇水という悪条件を差し引いても、やはり苗の状態が響いていたのではないかと思っています。雪解けの早い年は畑苗代も併行するにしろ、確実に苗を得たいので今後も苗箱での育苗を考えています。

 そこで、自然栽培での苗箱育苗について、床土(マット)・蒔き方・覆土等の量や質および手の貸し方など、助言をいただければと思います。

(2019/1/24 長野県 TOMさん投稿)

経験談1実践地は愛知県の温暖な地です。自然農経験は25年ほどになります。

 

15年ほど前に田んぼの面積が4畝から2反に増え、田植え時間短縮のため3~4年、苗箱で育苗したことがあります。

箱にスレスレまでクン炭を入れ、上から板で押し付けて平らになったところに1~2cm間隔で籾を置き、その上に籾が露出しない程度にクン炭で被覆します。その後再度、板で鎮圧します。

クン炭は水はけがよいので毎日乾いたらジョロで水やりします。出芽する時に表面が乾いているとクン炭が板のようになり表面全体が薄く持ち上げられてしまいますので乾かないようにします。

クン炭自体は養分がほとんど無いので2~3cmに育ったら発酵油粕を薄く振りまきます。

 

3~4日ほどで葉色が濃くなって元気に育ちますが何日かすると養分を吸い尽くして葉色が薄くなってきますので再度発酵油粕を振りまきます。油粕が多すぎると軟弱に育ち、根を損ねることになるので葉色の変化に気をつけて観察し、多すぎて葉色が濃くなりすぎることのないようにします。箱は浅くて、播種密度は苗床の場合よりも密のためどうしても大きく育つことはできません。そのため苗床で育てる苗より少し小さい苗を田植えすることになります。

クン炭は水はけがよくてすぐに乾くのでわたしは水平にならした上にブルーシートを敷いてその上に苗箱をいれてプール育苗としました。(2反の田んぼに30箱ほどの苗箱を使いました)

苗床のようにたくましい苗はできませんし発酵油粕を持ち込むことになりますので最善の策ではありませんがやむをえず一時期、箱苗を使いました。

(2019/2/26 愛知県 Nさん投稿)

経験談2(相談者のその後):3月下旬から、苗箱で肥料分なしで育てた稲の苗は、4センチくらいまでは順調に大きくなりましたが、やがて頭打ちになり、小さいまま植えざるをえず(5月末)、その後地面の上でも概ね勢いを回復することができませんでした。

 実りも前年と変わらず少なく、苗の時の育ちが一生を左右するのだと(教科書に書いてあることを今更ながらに)確認することになりました。

 苗箱で育苗する限り肥料で支えてあげることは、避けて通れないようです。

 今年は有機対応の肥料入り培養土で、セルトレイ(200穴位)を使って試そうと思っています。

(2020/3/11 長野県 TOMさん投稿

経験談3こちらは東北南部ですが、海抜25メートルの盆地。根雪にはほとんどなりません。

ただ、揚水に中干し期間があり、8月末で水が止まってしまうため田植えを5月下旬から6月初旬までに終わらせなければならなかったので田植えの時期は同じですね。

原発事故の影響もあって2013年からお米作りを休んでいるので忘れていることも多くお役に立てるかわかりませんが、私の経験をお伝えしようと思いました。

 

うちでは2007年までは田んぼを整地して育苗箱を置き、苗を育てていましたが赤目自然農塾で学びなおしたことをきっかけに畑苗代での育苗に切り替えました。

箱苗については『自然農への道』に詳しく書きました。(自分ではもうほとんど忘れていました)

*面積は約10a 育苗箱は40枚 土は山土をふるってギューッと半分くらい詰めひと箱につき40gの種もみを蒔き山土で覆土 (もう少し少なくてもよかった) たっぷり水をかける。

*畑苗代のように箱苗を置く場所を準備し、油粕をうっすら撒いて鍬で軽く混ぜ、整地(箱との間に隙間ができないよう)

*刈草を乾燥防止にかけラブシート(という保温資材)をべた掛けし、ポリでトンネル・・・発芽したらべた掛けをはずし霜が降りなくなったらトンネルを外し、必要なら防鳥ネットか防鳥ひもを張りました。

育ちが良くなければうっすら米ぬかを振ります。(足りなければ補う、補う程度に「補う」、ということで耕さないで栽培できるなら 足りないという自分の目を信じたいと思っています)

養分だけでなく以下のことはどうされていますか?

 

  1. 温度がないと育たない。保温はどうされていますか?
  2. 早生の品種を二本植え、など、品種の選定はどうされていますか?

生育期間の短い地域は「草の中に一本植えた苗が何十本にも分けつした姿」を求めないほうが良いと思います。コシヒカリは6月初旬に植えたのではこちらでは冷夏の年は育ち切らないのでマナムスメ(わせ)の二本植えと両方にしていました。早生は苗の育ちも早いです。

二本植えは苗とりが大変で本数も倍必要なので畑苗代での育苗は草取り、苗とりが大変でした。箱苗なら楽だろうと思いましたが、畑苗代の苗があまりに元気で田植えをしていても安心で植えた後の一回目の草刈りが楽だったので箱苗はやめましたが、いつかお米作りを再開できたら、これからますます体力も落ちてくるのでお米を育てられるなら箱苗もいいかな?と思います。

(2020/3/31 宮城県 きたむら自然農園&丸森かたくり農園 北村みどりさん投稿)

※関連するテーマ「寒冷地での稲作」については、下記の経験談も寄せられましたので、参考にしてください。

豪雪地帯での自然農の米作り ~箱育苗~(山形県 阪本美苗さん投稿)

日本海側、多雪地、寒冷地における自然農の稲作り(富山県 石黒完二さん投稿)

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