問題:
- キャベツ、玉ねぎ、ナスなどを大きく育てて収穫したいが、畑の土がなかなか肥えていきません。
- 大根や人参は、うまく育つこともあれば、エンピツぐらいにしか育たないこともあります。
- 畑の養分が不足していると思うのですが、刈った畦草や、家庭からの生ゴミ、米ヌカなどを補いつつ続けていけば、それらの問題は解決するのでしょうか。
- 畑の地力を上げるためには、どのようにしたら良いでしょうか。(鹿児島県 Hさん、愛知県 Nさん、福島県 Aさん他多数)
解決策1:私は最初、うまく育たないのを「補いが足りない、地力が足りない」と地力のせいにしてしまうという失敗をしました。実際、自分がどのくらいの知恵と技術をもっているか、その場所を観ることができているかを、冷静に判断した方がいいと思います。
まず、畝をどういう風にたてているか、きちんと空気が通って、陽があたって、そして水が滞らない畝に整えられているか、それを最初に問い直した方がいいと思います。畝をたてるということは、すなわち野菜を育てるに敵した地形をまずつくることだと考えています。それが、一番最初の大きい仕事です。
次に、その場所に合う作物を選ぶことができること、観ながら待つことができることが大切です。
その上で、適期に種を蒔けているか、草を必要な時に必要なだけ刈ることができているかも、問い直すことが大切です。(宮城県 Kさん)
解決策2:精米して出る米ヌカと、野菜くずの生ゴミ、極く少量の漁具甲殻類の骨、アラ、殻といった日々の食事からの生ゴミを戻してきただけの畑でも、5年目には旺盛な豊かさを表す畝も出て来ました。
農的くらしをする為の食物は充分にめぐんでもらえる事を確信しています。待つ事が出来れば、それが一番なのではないか? と想う今です。(岡山県 Hさん)
解決策3:もともと耕していた土地を自然農に切り変えたので、当初は地力不足が大きな課題でした。冬の間に米ヌカなどを施すことによりなんとか作付できました。
補いを多く使っている時は、虫害病気が多く出て困りました。様子を見ながら数年~10年くらいでほぼ無くしましたが、ほぼ無肥料に近づくにつれ、生産は安定してきたと思います。このような経験から、作物の健康な姿を明らかにするということの大事さに思い至りました。
その後、補いについては慎重で、長くほぼ使わないくらいできています。ただ、草の管理の仕方によっては、少し地力不足を感じることが有ります。自然の営みに任せつつ補いをどうするかは、今後の課題です。(徳島県 Oさん)
解決策4:私は自然農5年目です。1年目は、地生(じばい)きゅうりを植えてもうまく育たなかったのですが、次に、つる性の赤花ふじ豆(あかばなふじまめ)というマメ科のものを植えたら元気に大きく育ったので、収穫したあと、つるをそこに寝かせました。翌年、そこに同じように地生きゅうりを植えたら、赤花ふじ豆のつるを寝かせたところは地生きゅうりが大きく育って、寝かせなかったところは大きくならなかったです。
エンドウもつるが大きくなったので、そのまま寝かせてから大根を植えたら、大根が今までより大きくなったので、つるが伸びるマメ科のものをそのまま寝かせたら、翌年良さそうだなと思っています。
また、田んぼの畦の草を沢山刈って入れたら、入れたところはタマネギが大きくなっていると感じています。(三重県 Iさん)
解決策5:うちは田んぼと畑を合わせて4反強あり、そこで私たち家族4人が生かされています。畑を豊かにしようと思ってやったことではないのですが、結果として豊かになったかなという事例です。
暮らしのなかでどうしても出る生ゴミを畑の上に重ねるということを続けてきたのですが、それがどうしても動物を寄せつけてしまうことになっています。それで4、5年前から、生ゴミを直接畑に返すのは冬場だけとか少量にして、庭先に木で囲ったコンポストの箱をつくりまして、そこに生ゴミと土を重ねるようにしています。しばらくすると水分が地面に抜けて、すこしは醗酵して形も匂いも無くなってカラカラ状態になります。そうなった時点で、現在作付けしていない畑の上からばらまくようにしています。それで、結果として少し肥えてきたかなという風に思っています。
また私は、私一人の大小便を3~4ヶ月、畑に返した経験があります。ポータブルトイレに大小便をして、畑に運んで、畑の入り口の川の水で薄めて木の棒でかきまぜて、現在使っていない畝に戻すことを3~4ヶ月やりました。
今の日本の人間生活の中では、ほとんどが水洗で流れている排泄物を、自然農の農的くらしの中に利用していくことは一つの答えだと思い実践してみたのですが、結果は畑がかなり肥えました。
その畝だけ牧草みたいな草が生えたりして、今はやめましたが、私たちの生活から出るものをうまく巡らしていくというのも大事なことだと思います。(福岡県 Kさん)
解決策6:すぐに結果を求めないということも、大事にされた方がいいように思います。1年目~3年目の初期の畑において、白菜を結球させなければちゃんとできていないと思うと、非常にしんどくなるのではないかと、ばら白菜でいいじゃないかという視点がいると思います。
たまねぎがピンポン玉くらいのものしかできなくても、秋にもう一度埋めてあげれば、その年の12月から2月くらいまで、「葉タマネギ」ということでネギのかわりに利用できますので重宝します。そんな利用の仕方もできる、という視点も持たれたらよいと思います。(和歌山県 Yさん)
解決策7:赤土の粘土質の畑と、砂地の畑と、両方経験してきました。初期の畑においての、土質による地力の違いと、補い方の違いについてのお話です。
以前にやっていた粘土質の畑の経験では、初期の補いの仕方は、米糠と菜種かすを半々に、“さっ”と蒔く程度でも、補いの養分をとどめておく力があったと思います。
今やっている砂地の畑においては、同じように初期のときに“さっ”とやるだけでは、保水力や養分力が少ないので、あっという間に水ですいこまれたり、流されてしまい、補いの養分をとどめておく力が無いように感じています。
具体的にいうと、砂地の場合での白菜です。僕は、たまたま白菜と白菜の間に米糠と油かすを掴んでかたまりのまま置いたんです。そうすると、かたまりで置いた場合はそれが流れていくのに時間がかかるので、長くゆっくりと効いてくれて白菜が大きくなりました。このようなことがたまたま1年目にあり、2年目には“さっ”と散らしただけでいけるのではないかと思って、それを白菜で試みましたが大きく育ちませんでした。
その作物にもよると思うのですが、砂地の場合は、補いをかたまりにして置くというのが、長くゆっくり効かせるという意味においては有効のような手応えを感じています。
砂地の畑で丸2年経過したのですが、だんだん肥えていく、豊かになっていくには、粘土質の畑より少し時間がかかるのかな、長い目で見た方がいいのかなという感じがしています。(愛媛県 Yさん)
編集記:自然農の畑を始めたけれど、作物が十分に育たない……。地力が不足しているのでしょうか……という声は、よく耳にします。
ひとまず、2014年3月に行われた全国実践者の集いの「田畑における具体的問題と解決」の学びのレポートをもとに掲載してみましたが、他の視点からの解決法などもありましたら、是非お寄せください。(2014/7/10)
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