問題1:現行農業から切り替えた当初は、地力不足で健康に勢いのある苗に育たなかった。
解決策:
【事前に補う】冬に入る前(脱穀後)、草の種を取り除くため表面を削り取り、米ぬかを均一に振り撒き、稲わらを敷いておくと、春の種降ろしのころには米ぬかが腐植して地力がつく。この場合は、種降ろしの前に、苗床の表面を2~3センチ軽く耕して土と米ぬかの腐植したものとをよく混和してから種を降ろすようにする。
【発芽後しばらくしてから補う】あるいは、発芽から約1ヶ月~40日後の頃、足元の草を抜いた後で、米ぬか、あるいは米ぬかと菜種の絞り粕を等分に混ぜたものを、均一に振り撒く。振り撒く量は、体積で籾種の2~3倍程度を目安とする。振り撒いた後、苗の上に乗っている米ぬかや菜種粕は、わらの穂先等でそっと振り落す。この作業は露のある時はしないこと(米糠や菜種粕が苗に付いてしまうと良くないため)。
問題2:10年程経過した頃、発芽時に芽と根を損ねられることが生じた。
解決策:それで、地力をつけるべく事前に米ぬかを苗代地に振り撒くことをやめると、健やかに生育するようになった。
問題3:20年程経過した頃、再び発芽障害と生育障害(萎縮する)が出るようになった。
解決策:やはり養分過多ゆえと考えて、苗代づくりの際、腐植過程の層を鍬で除いて、完全に腐植している層に種を降ろすと解決した。
問題4:30年目頃に、又発芽が悪くなってきた。
解決策:すべての腐植層(腐植過程の層+完全に腐植している層)を、鍬で残さず削り取って種を降ろすと、健やかにスムーズに発芽するようになった。
完全に腐植している層はさほど厚くはないが、それでも少しずつ厚くなり肥沃になってくるゆえに除いて、もとよりの水田の土の上に種子を降ろす。もとよりの土の層にも草々や作物の根や小動物の死体等も混ざって、少しずつ肥沃になっているが、発芽における問題は生じない。
土地が肥沃すぎると発芽障害が生じ、反対に養分が不足すると発芽後の成長が良くない場合が多い。
苗が5~7センチ位に生長した頃には、根も十分に育っているので、米糠やナタネ粕の補いによる障害を受けることはない。その後の生育を少し助けるために、36年経過した今も、発芽から約1ヶ月~40日後の頃、少量の米糠、あるいは米糠とナタネ粕とを混ぜたもので補っています。籾種と同量から倍量位として、多過ぎない様に。
(以上すべて、2015/4/5 奈良県 川口由一さん投稿)
編集記:自然農を始められてから36年を経過するなかでの、貴重な体験談をお寄せいただきました。他の皆様からの体験談もお待ちして、より理解を深めていきたいと思います。
「不足しても良くない」「過ぎても良くない」……シンプルですが、普遍の理(ことわり)につながることですね。(2015/ 10/5)
経験談1:自然農の田んぼをはじめて3年目頃に、発芽後しばらくしてから、苗床に米ぬかを振り撒いたところ、苗にいもち病が出ました。養分過多によるものと考えられたので、それ以降7~8年間、苗床への米ぬか等を振り撒いたことはありませんが、稲は毎年元気に健康に育っています。
田んぼの条件は、平坦地で耕作土は深いです。近くに川がありますが、過去に川が氾濫を繰り返していたところは、土が肥沃であると考えられます。
また、毎冬、裏作の麦を栽培しているので、田んぼが肥える感じがしており、そのため地力があるのかもしれません。
(2015/10/11 兵庫県Nさん談)
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