毎年、オケラに種籾を食べられています。その都度、色々と試し、失敗を重ねてきました。
「その中で培った対策」という投稿ではなく、時系列にまとめながら、失敗したこと、その過程で気付いたことを書きたいと思い、投稿しました。
棚田全体の様子
・川の水が少なく、真夏は水の引き込みに苦労する。
・それでいて全体的に水はけが悪く、特に水路側は湿気が多い傾向。
・棚田の三方は、高い樹に囲まれている。
近年、田んぼを借りる人が増えてきました。人手が増えたので、共同作業にて棚田全体の治水に着手出来るようになりました。とても学びが楽しいです。
こうした背景の棚田にて、今年で9回目のお米作りを迎えます。
田んぼの様子
赤目自然農塾の山の斜面にある棚田で、縦長に二区画分、友人とお借りしています。
1年ごとに、水路側と畦道側を交代で応じています。
2014年(水路側の田んぼ)
4月13日
湿気が強いため、苗床の乾燥を促すことも兼ねて、モグラ溝だけ先に設けた。
4月下旬
土の状態、良好。宿根草の根を除き、種降ろし。覆土、草、土の鎮圧をシッカリした。
5月初め
苗床が蒸れて、沢山のオケラやナメクジを招く。10本程度しか発芽せず。
反省
土と草の被せ過ぎ。鎮圧不足。
来年の課題(周囲のお話を伺い、感じたこと)
- オケラが走りにくいよう、鎮圧はしっかり行う。
- 高温多湿の気候下では、草が多いと蒸れやすく、覆土も多過ぎると発芽が遅れるそうだ。その年、その地域の気候と、田んぼの湿気の度合いを考慮して、草や土の被せ具合を工夫していきたい。
- 湿気が多いため、15センチほどの縁にして乾燥を促した。(反面、オケラは苗床に届きやすくなると伺った。)来年は、苗床の縁を30センチにして観察したい。
- 種降ろしの時期を、5月上旬ギリギリに行うのも一つの方法とのこと。
2015年(排水口側の田んぼ)
4月26日
苗床の縁は30センチにし、香米(ジャポニカ)と赤米(モチ)を半分ずつ種降ろし。しっかり鎮圧。蒸れないか気になり、草や土は少な目に被せた。鳥除けの応じ方、草や土の被せ具合に過不足がないか、気にかかる。
5月10日
香米は、鳥が頭を突っ込んで食べた形跡有り。7割発芽。追加蒔きせず。赤米は、土が浮かされ7割ほど食べられた。鎮圧が足りず、オケラの侵入を許してしまった。芽が出ている籾もあるので、芽や根を損ねないよう、浮かされた土は手の平で押さえた後、追加蒔きした。発芽した種籾があるので、教わった通り苗床に米ヌカを補う。全体的に草が少なく、土が見えて乾燥していた。不足が心配だった草を追加し、水も少し与えた。
5月16日
香米も赤米もオケラに入られて、合わせて20本を残し、残りは全部食べられた。1センチほど発芽していた種籾も、芽が千切られて籾殻の中身はきれいに食べられていた。草を除き、全体に土が浮いていたので、出芽の20本を損ねないようゲンコツで土を鎮圧(手の平だと弱かったため、ゲンコツにした)。何度も何度もゲンコツで鎮圧、表面が少し凸凹したので手の平でならす。また、苗床にモグラが走り、盛り上がった土やモグラ塚があった。「モグラは虫を食べるし、穴を潰したとき20本の種籾の根を損ねるかもしれない」と思い、モグラ穴や塚をそのままにして種籾を播いた(穴は、田んぼに水を入れる頃に塞いだ)。種籾が土と面一になる位まで軽く押し、覆土せず、草を多めに被せて手の平で鎮圧(多めと言っても実習田の量より少ない)。モグラ穴の所は空気が通ると思い、乾燥しないよう多めに草を被せた(実習田くらい)。鳥が草を掻き分けないよう、草を押さえる細い枝を新たに追加した。
5月31日
9割がた発芽。時期が遅い分、前回の残りの20本と比べると幼いが、元気に育っている。生長した苗の妨げになるので、草に載せた枝は除く。日が当たるよう、鳥除け用の枝もゆったりとした感じに組み直す。
この年、初めて苗が自給出来、収穫に至った。
覆土しなかった理由
- 同じ棚田の人のお話を伺う中で、「土が湿っていて団子状になり、覆土できなかったので草を多めに被せて鎮圧した」とのお話が気になったから。(この人の苗は見事だった。)
- 土と草の被せ過ぎでオケラを招いたので、蒸れない様にしたかったから。
- 飼育されているオケラは、普段から地中で過ごし、地中を移動して食事をしている(捕食者に狙われないためかな?)。餌やりは、オケラの通り道(地中)や地上への出入口付近に置かれていた。また、田んぼで見かけるオケラは、掘り出されるとすぐ地中に潜ろうとする。これらのことから、草を被せていたとしても、覆土しなければオケラの身体は地上に出ることになり、この状態をオケラは嫌がるかもしれない、と思った。
この年の感想
念入りに鎮圧しても土は浮かされる。力が弱くても、しっかり鎮圧出来る応じ方がないかな、と思った。とは言え、初めて苗を自給でき、獣害もほとんどなく、収穫出来てうれしかった。何度も播き直す過程で、なんとなく「オケラがいても問題にならない、すき間」があるように感じた。同時に、覆土しない応じ方を来年も行い、観察を続けたい。
2016年(水路側の田んぼ)
5月初め
この年は、いつもより時期を遅らせ、5月初めに種降ろしをした。この年も覆土せず、青草のみ。鎮圧も更に念入りにした。
一週間後
オケラが走ったが、5割発芽。苗床全体の土が浮かされた様子はなく、苗床の縁を利用して移動し、縁周辺の種籾を食べている。鎮圧の効果を感じた。同時に、「苗床の縁は草があるので、湿気があり土が軟らかいため、オケラは住み易い」と思った。苗床の乾燥にも繋がるので、試しに苗床の縁の一部を削ってみた。
5月半ば
ほぼ全滅。1センチほど芽が出た苗も、食べられている。紫黒苑、香米(ジャポニカかタイか忘れました)、赤米(モチ)の発芽させた種籾を頂いたので、蒔き直した。
5月下旬
紫黒苑、香米は8割発芽、赤米は3割。残りはオケラに食べられた。
その後、紫黒苑は極晩生で赤目の気候に合わず、収穫出来ず。残りのお米も、育ちはしたが後に獣害を受けた。
この年の感想
湿気が強くオケラがいる田んぼでは、「覆土なし、草で湿気調整」の方がオケラが走りにくいように感じた。種籾を降ろす土表面も、覆土されていないだけ多少乾燥気味なのも、オケラには辛いのかもしれない。しかし、種籾には適度な湿気は必要だし、おなかが空いたら、オケラは何が何でも食べに来るとも感じる。決まった方法はなく、オケラも田んぼのいのちの一部と受け入れるしかない。同時に、オケラがいても問題にせず、種籾が発芽する「すき間」があるようにも感じている。
収量は少ないが、実りの多い学びで楽しかった。
ここ3年間、色々と試したことは、どれも成功とは言い難いです。
ですが、これらの失敗から下記のことに気付かされました。
- オケラの食害を受けにくい「すき間」を感じたことで、「いのち」全体を見ていなかった事に気付かされた。
- 鎮圧は効果があるように感じる。
何年もかけて、漸く自然農のスタートラインに立ち始めたように思います。
今後は、日照時間の長さ、風通しの良さ、土の湿り具合、気候、オケラやお米、草々のいのちに目を向けて、自身の田んぼだけではなく、もっと広い視野からいのちを見ることが出来たら良いなぁ、栽培に繋げられたらいいなぁと思います。また、水の巡りが悪い田んぼ全体の整えも、共同作業を通じて学べたらうれしいです。
(2017/4/24 大阪府 Uさん投稿)
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