・慣行農法に囲まれて

相談:自身の健康回復のため田舎に移住し、赤目自然農塾で学んだ自然農で自給的に作物を育て始めて6年になります。

けれど残念ながら周辺の田畑は、農薬、化学肥料を普通に使う慣行農法を行っています。

移住前、「ほとんど使わない」と聞いていた薬の類ですが、実際には「消毒」という名目での薬剤噴霧があちこちの田畑で行なわれています。

美しい山や川、この村がとても好きで移り住んだのですが、このあたりの問題をどう考えればよいのか、どう対処すればよいのかと迷っています。

(2018/6/22 兵庫県 Hさん投稿)

 

経験談1:自然農を初めて7年になります。私の借りている畑の周りはミカン栽培の畑です。

ミカンの木への噴霧。周辺の草には薬をかけて除草することは日常になっているようです。

最初の頃、「自然農」を知らせて無かったので、(親切のつもりだったのでしょう)畑に除草剤が撒かれていたりしました。

会う人に「自然農を勉強しています。」と話したり「自然農で野菜、花を育ててます。」と看板を立ててからはそのようなことはなくなりました。

畑には草を自然のままにと思うので、受け入れてもらうために、よその畑との周辺だけはしっかり草刈りをしています。

鳥獣の侵入があって、思うように栽培が進まず自給の理想には程遠いのですが…。

 

Hさんと同じように私も縁あってきたこの場所が好きです。

私がここでしっかり自然農をしていくことで、周りの皆さんが少しでも何かに気付いていただければ、自然農の素晴らしさを感じてもらえれば嬉しいと思っています。

 

私に与えられたその土地はその周辺のどこよりも、自然豊かな場所でこのような場所が広がってこれが普通になっていく日がくることを思っています。

困難な道のりのようですが、だからこそ、そこがどのように変化して自然農の畑が広がっていくのかとても楽しみでやりがいを感じています。

(2018/8/18 長崎県 K.Yさん投稿)

 

経験談2:兵庫県Hさんの「慣行農法に囲まれて」の投稿を拝見して改めて僕の内から思い浮かんできたこと。

 「中学卒業と同時に専業農家となり、約三年間は鋤、鍬で田畑の隅から隅まで何度も耕し、牛で耕し代掻きをしてから手植えの田植え、そして草を敵にしての水田の除草や草刈りや稲刈り、麦刈りは鎌で手作業。人糞尿堆肥等中心の肥料を用いて育て、四年目頃から発動機、脱穀機、耕耘機、農薬除草剤、化学肥料等を取り入れての現行農業を20年間行ない、やがてそれらから離れてより40年間自然農を続けることのできて今日もやることできている日々のありがたきこと。本当に救われてうれしい。」

 

 どうしても化学肥料、農薬、除草剤を用い、石油による大きな農機具を使うなどしての23年間の農業をやめにして、お米づくり、野菜づくり、果物づくりをしたくなり、心に決めて今日もやることができているのはなんとも〝うれしい〟ことであり、周囲や村人との関係も〝ありがたいこと〟となっています。田畑からの恵みは豊かであり美味であり、身体を健全に養ってくれています。

 当初はいろいろと村人から問題をもちこまれましたが、先方の「言い分をひたすら聞く」「こちらの言い分は決して云わない」「僕は間違ったことをしていない」ことも決して主張しない。

 そして周囲の人達の農のあり方には一切苦言や否定した言動を行なわないで常に衝突しないように対応し行動してきました。それは是非に耕すことなく、農薬や大きな農機具を用いず、古きよりの道具を用いての手作業での日々でありたいとの願いを是非にやりとおしたい思いが定まっていて、それを日々実践することが楽しみであり、よろこびであったからです。

 再び農薬や肥料、農機具は用いたくない。肥料購入したり造ったりして用いたくない。草を敵にした作業はしたくない。安全な食べ物を自然の恵みから受け取っての日々でありたいと心から身体から、いのちから願うようになっていましたので、他人に何を云われても、攻撃されても馬鹿にされてもそのようなことは気にせずに悩まずに、やりたいことをやり続けることに心がはずみ専念することができました。

 

 また作物が育たなくとも続けてくることができました。

 専業農民の僕がお米は3年、野菜は10年の試行錯誤で専業農民ではなくなりましたが、収入にはとらわれず、育たないのは僕の手の貸し方、作業の進め方が悪いからとの思いと的確に手を貸してやればかならず育つはずとの確信からもとの農業にはもどることなく続けることができました。

 耕さない、肥料農薬を用いない、草や虫を敵にしない。その上で気候、風土、天候、作物の性質、田畑の環境に応じ、従い、添い、そして任せる、できる限り自然に近いあり方で田畑に立ち、必要に応じて作物が健康に育つべく適期に的確に手を貸してやる栽培方法。地球上で持続を可能にしてくれる農のあり方に取り組んで今年で40年目。本当に楽しいですし農本来のよろこびを知ることができました。

 豊かな大自然の中に身を置き、いのちある作物をいのちある自分が向き合い一つとなっての日々は静かなよろこびであり、いのちの根底から納得の入るもので幸福です。このよろこびは人間としてのいのちを宿した身体を授かっている人類全体に通じる普遍のよろこびであるとつくづく思い感ずる老年期ともなっています。

(2018/10/11 奈良県 川口由一さん投稿)

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