赤目自然農塾におけるワイヤーメッシュ、異形鉄筋、波板トタン、獣用ネットを用いた猪・鹿対策用柵の作り方を紹介します。
最初に赤目自然農塾で、長く設置してきた木杭と波板トタンを用いた柵造り(以下波板トタン柵)とワイヤーメッシュと異形鉄筋を用いた柵造り(以下ワイヤーメッシュ柵)について考察してみます。
【 波板トタン柵 】
メリット
- 廃トタンが多量に入手でき、木杭を自前で調達できれば比較的安価で作れる。
デメリット
- 杭をカケヤ(大きな木槌)で打ち込む作業や波板トタンを杭や横木(けんじめ=野地板)に貼る釘の打ち付け作業など一人では難しい。
- 新品の材料を購入する場合、ワイヤーメッシュ柵より高くつく。
- 木杭や横木は雨風に弱く、数年で強度が弱くなり、イノシシが弱い箇所を探して体当たりし、破壊して侵入する。
- 同時期に何カ所もメンテナンスが必要となる。
- メンテナンスも一人では作業しづらい。
【 ワイヤーメッシュ柵 】
メリット
- 短時間で設営できる。
- ワイヤーメッシュは、弱い箇所ができにくく上手く設置できればほぼ完璧に防御できる。
- 材料の扱いが比較的簡単で、鉄筋の打ち込みやワイヤーメッシュとの結束も一人で作業が出来る。
- 長年に渡り、強度を維持できるのでメンテナンスがほとんど必要ない。
- 見た目が綺麗、すっきりしている。
デメリット
- ワイヤーメッシュだけでは、メッシュの間隔が15cm角なのでウリボウに入られる。さらに外側を波板トタンや防風ネットなどで覆う必要がある。
■ワイヤーメッシュ柵に必要な資材
- ワイヤーメッシュ(線径5mm、1m×2m、メッシュ間隔15㎝)
- 異形鉄筋(線径16mm×1.5mと1.0mの2種類)
- 針金(ステンレスの針金やビニール被覆の針金など)
- 獣用ネット(1m×50m)
- 角材(3cm位×3cm位×200cm)
- 波板トタン
- 電線など柔軟で丈夫な針金
■必要な道具
- 片手ハンマー
- ラジオペンチ
- ワイヤーカッター(5mm以上の鉄線が切断できるもの)
- 金槌
- 五寸釘(トタンの穴開け用)
■資材の調達
- 柵を設置するラインを決めて、距離を計測する。
- ワイヤーメッシュの枚数は、ワイヤーメッシュのつなげ方を一目重ねる場合(下記図A参照)距離÷1.75mを目安に算出する。つなげ方を一目も重ねない場合は距離÷1.9mを目安に算出する。例えば、距離が100mの場合、図Aのように1目重ねる場合は、58枚+余分に2、3枚用意する。
- 異形鉄筋の本数は、1.5m、1.0mの両方ともワイヤーメッシュの算出枚数+数本を目安に算出する。
- 角材の本数は、ワイヤーメッシュの枚数÷2+数本を目安に算出。
- 鹿対策用ネットは、1本50mあるので距離に合わせて用意する。
■設置の仕方
1.
あらかじめ設置ラインの近くにワイヤーメッシュ、異形鉄筋は適当にまくばりしておく。
2.
出入口の場所を決める。出入口の所を起点にして1.5mの異形鉄筋をハンマーで50cm打ち込み、異形鉄筋の外側に1枚目のワイヤーメッシュを横に立て、端の縦のワイヤーに合わせて、針金で異形鉄筋とワイヤーメッシュを結束する。(図A)
- ワイヤーメッシュが上下にずれないようにワイヤーメッシュの鉄筋が縦横交差しているところで結束する。
- 基本は、上から2本目と下から2本目のところを針金で結束する。結束の仕方は下の写真のように番線締めの要領で、約30cmの長さの針金を折り曲げて一回りさせて、先の輪になる部分にラジオペンチの先を突っ込み、元の針金を中心に回転させて締めていく。ラジオペンチの代わりに五寸釘でも出来る。
3.
2枚目のワイヤーメッシュを1枚目のワイヤーメッシュに端の1目が重なるように立て、それに合わせて1.5mの異形鉄筋を50cm打ち込み、針金で鉄筋とワイヤーメッシュを結束する。(図A)
4.
1枚のワイヤーメッシュの真ん中辺りの縦ワイヤーに合わせて1.0mの異形鉄筋を50cm打ち込み、一カ所を針金で鉄筋とワイヤーメッシュを結束する。(図A)
上記2~4の作業を一周するまで繰り返す。
5. 異形鉄筋に沿わせて角材を立てる(図A)
(1)鹿対策用ネットを張るための角材は、ワイヤーメッシュ2枚間隔に異形鉄筋に添わせて立てることを基本とし、カーブの所は状況に合わせて間隔を狭くする。
(2)角材の先端から5cmくらいの所にネットを引っかけるための釘(傘釘でも良い)を打っておく。
(3)釘は柵のラインの状況に応じて内側に向ける場合と外側に向ける場合がある。
一本の角材が両側の角材と比べて出ている方に釘を出し、ネットを張る時も内と外を釘に合わせて張っていく。そうすることにより、ラインが曲がっていてもネットをピーンと張ることが出来、鹿が食い破りにくくなる。下図Bの場合、角材Dは両側CとEを結んだラインより内側に出ているので内側に釘を打つ。角材Eは両側DとFのラインより外側に出ているので外側に釘を打つ。
ラインが直線の場合は内外を交互に釘を向けていく。たとえば角材A、B、Cの場合は、交互に釘を打つ。(図B)
(4)ワイヤーメッシュの最上部のワイヤーから105cm位の高さ(地面から約2m)に釘の位置がくるように角材を針金で2か所ワイヤーメッシュと異形鉄筋ごと巻き付けて固定する。
(5)角材は地面に接しないように気を付ける。
6. ワイヤーメッシュの外側にトタンを貼る(図C)
(1)トタン1枚につき、上下2か所・水平に3ヵ所、計6か所針金で結束する。(図C)
(2)結束はワイヤーメッシュの鉄筋がクロスする所に、五寸釘で対角に2ヵ所穴をあけて、針金を通して結束する。
7. 獣用ネットを角材に打ち込んだ釘に引っかけて張る
(1)ネットをピーンと引っ張りながら角材の先端に打った釘にネットの上端を引っかけて伸ばしていく。(図C)
(2)内側と外側に打たれている釘に合わせて、ネットも内側と外側に回して張っていく。
(3)全部上端を引っかけてから、ピーンと下に伸ばした下端の所(上の釘から1m下)に、釘を打って引っかけていく。
(4)鹿が首を入れることができないようにワイヤーメッシュの最上部ワイヤーとネットを針金で結束する。
8. 出入口の設置
(1)出入口の幅は、利用の仕方により決めます。ただ人が通るだけなら1.0m位で十分だし、大きな荷物を持って通るなら(一輪車で通る等)1.5m位の幅が必要と思います。
(2)出入口の幅より少し大きめに、ワイヤーカッターでワイヤーメッシュを切断する。
(3)出入口用ワイヤーメッシュにも波板トタンを貼る。
(4)獣用ネットも角材の所で簡単に取り外せるようにしておく。
(5)外側から出入口用ワイヤーメッシュを当てて柔軟性のある丈夫な針金や電線などで柵に4点止めをして固定する。
(6)猪は弱いところに体当たりして破壊するので、強度を持たすために出入口用ワイヤーメッシュの一番下のワイヤーに異形鉄筋を結束しておく。
9. その他
(1)柵の外側が広く、鹿が助走してジャンプできるような所は、高さ2mでは足らないので2.5m位の角材を設置し、ネットを重ねて高さを2.5mにする。
(2)起伏のある所は、ワイヤーメッシュの長さを短く切断して対応する。異形鉄筋を状況に応じて斜めに打ち込む。
(3)カーブのところは、ワイヤーメッシュを曲げてラインに沿わせる。ワイヤーメッシュの曲げたい部分に異形鉄筋を置き足で押さえて端を持ち上げれば簡単に曲げることができる。
(2021/1/13 奈良県 中村康博さん投稿)
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