自然農に切り替えて43年目に入りました。専業農家の長男に生まれた僕は、現行の化学農業、機械化農業である、非自然、反自然の農業を23年間行っていました。そのあり方の誤りに気付いて不耕起、無肥料、無農薬、手作業の、自然に即した栽培方法に変え、その上で夫々の作物のいのちと性質に応じ、田畑の変化、気候、季節の変化に従ってゆく農のあり方に、すっかり切り替えて今日に至っています。このことは地球上どこにおいても、いつの時代にも通じる普遍のことであり、大切な基本となることです。
切り替えての約3年間、稲作は失敗で収量ゼロ、野菜は10年間試行錯誤で収入ゼロでした。作物が育たないのは僕の応じ方が的確でないゆえ、未熟ゆえであって必ず育つはずだとの思いで取り組み続けて、今日に至っています。その過去を思い起こしながら、自然農のこと等々をお話しいたします。
自らの未熟ゆえの失敗と判断から、自分を省みると同時に、作業のあり方をも省みることによって少しずつ育てられるように、そして育ってくれるようになっての今日です。が、今なお育たない失敗はついてきます。田畑においての作業と、智恵と能力を常に十分に働かせての適期に的確な作業は、僕の人間性の成長にかかっています。生きている間は成長していないといけない。成長の日々であることによって、今が喜びであり、幸せであり、平安であると同時に、自然に即した持続を可能にしてくれる食糧の確保、農の正しいあり方、実践と実現につながっていくものでありますので、いのちあるものとしての生き方、その成長が重要になります。
そうした思いから、多くの皆様の経験を出しあい、問題や考えや答えを共有しあい、育ちあっていきたく思います。「自然農・いのちのことわり~田畑における具体的問題と解決~」を、インターネットを通して発信、受信、伝達等々の作業を続けて下さっている佐藤太平さん、美佳子さん、よろしくお願いいたします。皆様もよろしくお願いいたします。
人生、常に学びでもあります。諸々の問題も、答えとなるものも共有しつつ、自然農の本質も、具体的な作業においても、そして生き方においても確認してゆきたく思います。また、求め来る人達にも、迷いの中にいる人達にも、本来の農のあり方を知らずに気付いていない人達にも、正しく伝えることのできる人に是非に育ちゆきたく思います。広大な宇宙の中の地球という部分で幸福に生きて全うしたいのは、すべての人が願い続けてきたことであり、今後においても誰しもが願い続けることです。
日本の気候風土では、お米が中心で、麦、小麦、そして諸々の穀類、そこに季節の野菜、果物が食の基本であります。そこに自然の中で生きている野山の山野草そして動物達、海川池の魚達が加わります。反自然な飼育の動物や養殖の魚は避けた方が良いのが、やはり基本です。衣食住すべてにおいて同じであって、農林漁いずれもしかりです。この基本が、食の安全性、食すものに宿されているいのちの豊かさ、味の美味しさ、心身の健康と魂からの平和を食を通して約束してくれます。また自然農は真の経済性においても、労働時間の正しい使い方においても、大切なこの地球環境を損ねない点においても、有限の資源を無駄遣いしない点においても、水や空気や大地を汚染せずに大切にするあり方においても、正しい真の答えを出してくれるあり方です。このことは、自然に応じ夫々のいのちに応じてゆく自然農を42年間続けてきて、その恵みをいただくなかで深く強く感じています。
「持続可能な農」の本当の心からの理解と実現には、深い理由があり、深い意味があります。それは人類が生きることのできている舞台である地球生命圏、あるいは地球という星の自然本来の営みと人類の存在に深く強く関わってくることゆえにです。「持続可能な農」という思想哲学が大切なのではなくて、この思想哲学が説き示す真の実践実現が是非に大切なのであって、単に思想哲学に終わってはなりません。
(2021/7/2 奈良県 川口由一さん投稿)
経験談のご投稿は 投稿フォーム から、お願いいたします。