第22回 妙なる畑の会 全国実践者の集い -事例集-

4.田んぼの水持ちが悪い、水が冷たい

【事例4-1】山間地の棚田で水持ちが非常に悪く、耕さない状態では水温も低い事もあってかなり育ちが悪い。現在は無農薬有機栽培に切り替えている。(岐阜県 Sさん、約16年目)

 

【事例4-2】棚田の水抜け。1年目は、もぐらの穴や水の確保に手間どるとあっという間に水が抜けやすくなり、水を入れてからの補修は大変難しいと思われます。あぜぬり、田植え後一週間の連続浸水が分かれ目と思います。又、冬の草の根も田の底を傷めやすいように思われるので、裏作の麦も大事と思われます。(徳島県 Tさん、約5年目)

 

【事例4-3】田んぼ全体からの水漏れを防ぐ方法がみつかりません。他の田んぼの中干し・収穫の時に迷惑をかけないよう、その間は水を少しだけ入れて止めるようにしています。(東京都 Hさん、約9年目)

 

【事例4-4】砂利が多くただでさえザル田なのに、去年はモグラによく掘られたので、排水口を設けていないにもかかわらず、水が田んぼの「ツラ」までつからない。去年の台風で土砂が流れこんだが、その土砂が粘土質だったので、今年は少し改善できるのではないかと期待している。

 モグラに掘られるので、表面が常に高低差ができる。修正してもすぐに掘られて凹凸ができるので、修正で表面を耕すくらいなら、いっそしないほうがいいかもと迷っています。(滋賀県 Nさん、約3年目)

 

【事例4-5】田んぼが、部分的に水が載らない。

  ・高い方から水を回すようにする

  ・高い所に苗床を作る

  ・モグラ穴を見つけたらふんでおく

 

【事例4-6】土が浅く、砂っぽいので、養分が少なく、水が溜まりづらい。

  ・こまめに足踏みしてまわり、水抜けを防いでいる。

  ・畦塗りをしても、すぐに流れ落ちてしまうので、足で踏み固めるだけにしている。

  ・冬に米ぬかを、田植え前に刈って来た草を入れる。

  ・林道の側溝に溜まった腐葉土を取って来て、株元に置いている。

 →「収穫した」と言える程の実りは、まだ得られていないが、水の溜まり具合や作物の生長の様子は徐々に改善してきているように感じます。(和歌山県 Kさん、約5年目)

 

【事例4-7】水もれについて、棚田で水もちが悪い、ザル田と言われているところ。粘土層がうすく、モグラも水田を横切って道をつくるのと、オケラも畦塗りしたところから漏水をまねいている(畔塗りの後、定期的にクワを使って畦をかためている。モグラについては、モグラとりをしかける。モグラ道を辿ってつぶす、草刈り敷きの時、水をヒタヒタ状態にしておくと水もちがよくなる)今のところ幸いにして、水が豊富に取り入れられるので、間に合っているけれど、面積を増やしていけないのが課題です。(山梨県 Mさん、約20年目)

 

【事例4-8】自然農歴は23年目になりますが、現在の糸島市二丈一貴山では19年目です。私どもの実践地は中山間地の棚田です。これから、土地を持たない都会生活の方たちが自給や営農を考える時、このような環境が入手しやすいと思われますが、山間部の棚田は、その土質故に、水がたまらない、穴がしょっちゅう空く、水が冷たく、分けつが進まないなどの問題がおこりがちです。実際、私どもの水田も、そのような状況下にありました。

 そこで、私たちが、この19年間に少しずつ取り組んできた工夫について書いてみます。

事例4-8画像

 1.溜めマス・・・うちの田は、すぐ横の川の水を高低差を利用して引いています。川の水口には枯葉や石が入らないよう網を置き、パイプで地中を通って流れてくる、田の取水口には、溜めマスを設置しました。以前は水の調整にいちいち川に降りて行っていましたが、大変便利になりました。

 2.木の板・・・山手で水が冷たいので、山の田ではよく波トタンが使われます。うちでは、初めの頃はトタンも使いましたが、今は木の板をめぐらせています。製材所の端材なので、安価です。このように川の冷たい水を直接田に入れず、少しまわしてあたたまってから田の中に入るようにしています。

 3.田の畝と畝の間を1枚ずつせき止める堤を作る・・・田植えは水口の方から順に1枚ずつやります、その時、草を倒して作付縄を張ったら1列ずつ足でよく踏んでモグラ穴をつぶすようにします。この時、普通は ABCDの畝は1枚の田んぼですから全てに水が廻りますが、冬の間に空いてしまったモグラ穴やカニ穴から水が洩れてしまうことがあります。それでAの畝に田植えする時はBCDに水が廻らないようせき止めます。Aの所の田植がすんだらBのところまで水を入れ、CDに入らないようせき止めます。このように、田の中の畝を1枚ずつていねいに田植えして、最後は全体に水が廻るようにすると、ずいぶん水洩れが解消されます。あとは毎日、必ず見廻ることです。

 4.畦を広く・・・棚田の畦はそのまま土手となっていますので、この土手が崩れたらたいへんなことになります。そこで私たちは従来の土手の幅を狭くても70~80、広いところでは1メートルくらいに広くとるようにしました。お米を作る面積は狭くなってしまいますが、土手や畦が壊れることを考えると、これはよい方法です。

 以上のような工夫で、19年間の重なりと共に、かなり豊かになってきています。また、その重なりにより、土中の膠質が増え、手で触った感じがずいぶん変化してきています。その土質の変化もあって、こまめに水の管理をすれば、かなり、当初の問題は軽減されると思います。(福岡県 Kさん、約19年目)

 

【事例4-9】(赤目自然農塾の)下の田で作っていた時:夏、水が入った時に畝の凹凸を観察し、それを図に記録。稲刈りが終わり、麦を播く前に、その図を参考にして畝をたいらにする作業を実施した。経験の浅さもあって、乾いた地面を見ても凹凸はわかりにくいが、水のある所はわかりやすい。それを記録しておくことは参考になった。(大阪市 Oさん、約23年目)

 

【事例4-10】最初に溝切りが深すぎたり田んぼの周囲のコンクリート壁ぎりぎりに溝を切ったため水漏れしてしまったので2年目は溝を埋め戻したりして対応した。3年目の田植えまでにもう少し溝の修復をする予定です。(広島県 Iさん、2年目)

 

【事例4-11】分けつが少ない。水ののりが少ない。草が多い。→水量は昨年後半、パイプで下の田への水量を調節できるようにしてからは溜まったので、今年は田植の段階から調節してみる。4年前に田を使っていた人が有機で耕起していたので、栄養不足になっているかもしれない。この冬に少し補う予定です。(東京都 Sさん、約3年目)

 

【事例4-12】田んぼに関しまして、他の田んぼとの水の分け合いや雨量によって、水が十分回ってこない田んぼをお借りしています。水の入口付近3分の1くらいは水が溜まるのですが、奥の方3分の2はほとんど水がない状態になります。その場合、3分の1はお米を3分の2はヒエや大豆など比較的湿りに強い作物を植えようと考えているのですが、そのことについて皆様のご意見をお伺いできましたら、ありがたいです。(福島県 Aさん、約2年目)

 

 【事例4-13】高冷地(標高900メートル超)かつ、水抜けしやすい田(火山灰土)での水温の確保については、耕さない基本からはずれるが、田植えの1ヶ月前に一度荒起こしをしている。代かきはしていない。長ぐつで歩きまわる程度。(大分県 Yさん、約10年目)

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